UMPCを“外部冷却”で底上げ:GPD WIN Mini 2025 × ペルチェ式スマホクーラー(BlackShark Pro4)レビュー

猛暑の候、みなさまいかがお過ごしでしょうか。冬でも放熱が厳しいUMPCにとって、夏はまさに過酷な季節。室内を冷やしていてもダレ(サーマルスロットリング)が発生しがちである。

GPD Win Mini 2025(Ryzen AI 9 HX 370 搭載機)にペルチェ素子搭載のスマホクーラー(Black Shark Pro4)を“外付け冷却装置”として活用し、ゲーム時の性能維持を狙う夏休みの工作を行った。
結果として、モンスターハンター ワイルズベンチではスコアが向上し、Zenless Zone Zero(ゼンゼロ)25W運用でも熱ダレなく安定プレイが可能になった。

※自己責任:分解・改造・結露による故障は保証対象外の可能性が高いため、自己責任でお願いします。


既にテストは改造の後で? 【GPD Win Mini 2025実機レビュー】で冷却性能は一応高めたものの、この時期25W運用でゼンレスゾーンゼロ(FHD、高画質)をプレイすると高頻度でカクツキが発生し、サーマルスロットリング(熱ダレ)が起きているものと考えられる。一方、20Wを下回るTDPにするとパワー不足を感じるため、25Wで安定的に動かしたい。とはいえ、前回の記事の対応でパッシブな冷却性能の向上には限界を感じているのでアクティブ冷却を試すことにした。前提として、自分はほとんGPD Win Mini 2025を据え置き機として外部ディスプレイにつなげて使っている。会社のPCをGPD G1につなげられなくなったことでG1が使いにくくなったのと、Ryzen AI9 HX370単体でほとんどゲームをするのに支障がないためだ。そのため、据え置き前提での冷却対策として、スマホクーラーを試すことにした。


使用した素材

ペルチェ式スマホクーラー:Black Shark系

  • 購入品:Black Shark MagCooler 4 Pro
    いくつかペルチェ式のスマホクーラーを見た中で評判が高かったので選択した。ポイントとは冷却能力(W数)と磁石で張り付けられる点である。スマホクーラーは昔見たときは10Wがせいぜいだったのだが、最近はスマホの消費電力も上がっているので、クーラーも強化されている印象がある。チョイスしたBlack Shark MagCooler 4 Proは27Wに対応しており、最新版のBlack Shark 5 Proに至っては35Wに対応している。電力がそのまま冷却性能になるわけではないので、GPD Win Mini 2025のTDPを35Wにして、スマホクーラーを27Wにしても差し引き7Wとはならないが、電力が大きいほど冷却能力は高くなる。
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115gの増加となり、重量的にも持ち運びに影響あり。

作業手順

既にテストは改造の後で? 【GPD Win Mini 2025実機レビュー】で同様の改造をしていたが、それをより強化する

1.APU位置の確認
APUの真上に来る外板(蓋)の位置を把握。

2.面の清掃
接触面は脱脂しておく。

3.当たり出し
ヒートシンクの上に、より高い電熱性を期待し銅製のヒートシンクを配置した。熱伝導パッドを蓋側に貼り付け閉めたときに軽く圧縮され、面で触れる厚みに調整する。こうしてみるとGPD Win Mini 2025の筐体は意外と空間があることがわかる。
※パッドが厚すぎると筐体が歪んだり基板への圧力が高まり破損の危険性がある。薄すぎると熱が伝わらない

前回は熱伝導シートだったが、銅製ヒートシンクに変更した。
1mm厚か2mm厚か忘れてしまったが、熱伝導パッドへのあたりを確認する。密着性を考慮し、あたることがわかったところで、それは剥がし、同じ厚さの新しいパッドを張り付けた。

4.熱の“道”を作る
APU→ヒートスプレッダ→外板→スマホクーラーまで、連続した面接触を確保する。段差がある場合は多層貼りで“均一な面”にする。

5.スマホクーラー装着位置の最適化
APUの真上に当たる位置にメタルプレートを張り付け、Black Shark MagCooler 4 Proがくっつくようにする。9cmのメタルプレートは大きかったので金切りばさみでサイズを調整した。

メタルプレートの直径は6cmでもよかったかも
利用時にはふたを開け、こちらが底面になるように置く。クーラーのファンを塞がないようにしつつ、自重でファンがより密着するように調節する
連携するスマホアプリで調整が可能。表面は-8度と十分な冷却性能が確認できる。
ベンチマーク時は低温保護(冷やしすぎないように調整される)を切って行った。

ベンチマーク:外部冷却の効果

TimeSpyとモンスターハンターワイルズでベンチマークを実施した。結果的に、TimeSpyではスコア向上はみられず、モンスターハンターワイルズでは30Wの設定時にこれまでで最高のスコアが記録された。TimeSpyでスコアが上がらないのは、短時間なのでサーマルスロットリングが起きる間もなくベンチマークが完了するためと考えられる。モンスターハンターワイルズは比較的長丁場のベンチなので、高TDPでは後半、明らかに紙芝居風になることがあった。Black Shark4 Proを装着するとほぼ一定のFPSで完走できるようになった。

以下の結果はモンスターハンターワイルズベンチをいくつかのパターンで行ったものである。

画質は中設定とし、解像度は1600×900にして、フレーム生成は行わない設定とした。

最も良い結果となったクーラーを装着し、外部ディスプレイにつなげたもの

クーラーなしだと、TDPを30Wにすると25Wよりもスコアが下がる。一方、クーラーを装着すると30Wで最高のスコアとなった。スコアにすると数パーセントの差であるが、後半、熱ダレによる紙芝居が回避されるので、見ている側の印象はだいぶ異なる。また、外部ディスプレイにすると全体の消費電力が下がり、発熱が抑えられるからかさらに少しスコアが伸びた。ちなみにクーラーを装着しても35Wにすると熱ダレが起きる。

imeSpy(TDP35W)は前回のテストと変わらなかった。

実運用で感じたメリット/デメリット

メリット

  • 25W設定でもブースト維持しやすい → カクつき減
  • 夏日&長時間プレイ時の安定性が上がる
  • 内部改造を最小限にしつつ即効性あり

デメリット/注意

  • 結露のリスクがある(後述)
  • 当たり前だが携帯性は下がる
    ファンの追加による騒音は、BlackShark 4Proの性能が高いのか、nwm ONE(この季節は本当にお役立ち) のようなオープンヘッドホンでゲームをしてもほとんど気にならない(GPD Winmini2025本体のファンも含め、音が聞こえはする)

結露対策

ペルチェは強力に冷やせる反面、露点を下回ると結露が起こる。
湿度が低めの部屋でも結露は普通に発生する。そのため、プレイが終了したら先にスマホクーラーを外し、そのままUMPCを数分間稼働して内部の湿気を飛ばしたり、温度を上げて結露が起こりにくくするようにした方が良いと思われる。


まとめ:UMPCの冷却対策に外付けクーラー(ペルチェ素子)は効果的。特にGPD Win Mini 2025ではサーマルスロットリングを防ぎ、安定したゲームプレイが可能になった

Black Sharkペルチェクーラー×熱伝導パッドで、25W運用の安定感が大幅向上した。ただし結露対策は重要である。外す→乾かす→電源を切るを習慣化する必要があるだろう。
携帯性は犠牲になるが、据え置きゲーム用UMPCとしてはコストに見合った効果があると感じられる。

2025年登場予定のUMPCを比較するに記載のようにGPD Win5や、Ayaneo Next 2などでより発熱量の大きいRyzen AI MAX+395を搭載したUMPCを企画している。GPD Win5は本体はAPUと放熱に特化し、デタッチャブルな大容量バッテリを搭載するようだが、こういったペルチェを使う追加の放熱器を外部ドック側に配し、モバイル運用は30W程度、ドッキングステーションに乗せた据え置き運用の場合には100W運用、という仕様もありではないか…、と思う今日この頃である。