2024年登場予定のUMPCを比較する

※このページは適宜更新予定です。

2024年もゲーミングUMPCは盛り上がりそうだ。

2024.1.28 OneXPlayer X1を追加
2024.3.10 GPD WIN MINI2024を追加
2024.6.26 One NetBook ONEXPLAYER X1miniほか各種更新
2024.8.16 AYANEO AIR 1S Ryzen 8840U、GPD Pocket4追加 他更新
2024.12.9 AYANEO3、GPD Winmax2(2025)、GPD Win4(2025) 追加

2023年のUMPC界隈は、内蔵グラフィック性能に優れたAMDのZ1 ExtremeとRyzen 7840uの独壇場であった。ASUSの「Rog ally」やLenovoの「Legion Go」など、大手メーカーがポータブルゲーミングPCでこの領域に正式に参入したのも特徴である。Z1 extremeや7840uは前世代のRyzen 6800uと比較して実行性能は20%向上した程度だったが、ライバルであるIntel製APUに対して高いグラフィックス性能を持っていた。

2024年もゲーミングUMPCを中心に様々な動きがありそうだ。

AMDは7840uの後継となる8040シリーズのAPUを発表しているが、搭載製品はまだ市場に登場していない。Ryzen 8040の強化ポイントはAI機能になる見込みだが、CPUの処理能力やGPUについても若干の性能向上が見込まれている。

一方、Intelは性能を大幅に強化したCore Ultraプロセッサーの本格投入を予定している。内蔵GPUであるIntel Arcは、従来の同社製内蔵グラフィックスの2倍の性能を持っているとされており、アイドル時の電力消費の低減も特徴である。これにより、スマホのようにスリープモードの常時運用が可能になるかもしれない。ゲーム性能においては、性能が2倍に強化されたCore UltraにRyzen 8040がどこまで競い合えるかが注目される。漏れ出てきているベンチマークテストを見るとIntel ArcはTDPを上げれば上げるほど性能が高まるように見える。Core UltraプロセッサーにはMaximum Turbo Powerという指標があり、例えばCore Ultra 7 155HのMaximum Turbo Powerは64W/115Wとなっている。ごく短時間しか持たない従来のターボTDPと異なり、電力が提供され冷却が続く限り、最大TDPを維持できる機能と認識している。ネットで見る限りTimeSpyのスコアで3000から4000ぐらいのスコアになりそうだ。このスコアの振れは供給電力と冷却性能に起因するものと考えられる。個人的には冷却機構と大容量バッテリーで巨大化・重量化するのは勘弁してほしいところだが、性能の高さに魅力を感じる人も多いだろう。また、メーカーは1種類のCPUで排熱と電力設計の調整のみで複数パターンの製品を作れる点に魅力を感じるかもしれない。
これらを搭載した製品は1~2月に発表され、4月頃には発売されるだろう。

6月現在、このCore Ultra搭載マシンはClaw A1Mをはじめとして発売が始まっているが、当初ドライバの精度が悪く性能でもRyzenの後塵を拝したからかあまり採用が進んでいないようだ。今は解消したようだが、いずれにしてもUMPCには排熱が問題となるのか採用は進んでいないように見える。One NetBookもCore Ultra 7 155Hを搭載したX1を発売しているが、あとからRyzen7 8840u機を追加している。

自分が注目しているのは年の後半にアナウンスされているIntel のLunar Lakeだ。このAPUはCPUとメモリがエンベデッドされたAppleのM系APUと同様の構成になっている。そのため、メモリへの高速アクセスが可能となり、UMPCは一つの到達点(あるいは踊り場)に来たのかも? ASUS ROG ALLYとGPD G1に思うことで記載したメモリのボトルネックが大幅に解消され、グラフィック性能が5割ぐらい増えるのではないか…という期待がある。搭載製品は年明けからになると思うが、エポックメイキングなAPUになる可能性があると思っている。

COMPUTEX TAIPEI 2024ではこれらの新世代APUがIntelとAMD双方から発表された。Lunar Lakeは大幅に電力消費が抑えられるということで、UMPCには福音になりそうだ。ただし、既に「性能にはそこまで伸びないのでは」といった情報も出ているようで、ちょっとそわそわする。こちらは年内には搭載機種が出てきそうである。一方のAMDはRyzen AI 9 HX 370を発表した。GPUバージョンがRadeon 890Mにバージョンアップし、すでに出ているベンチマークテストではTime Spyで4000越えらしい。標準TDPは28Wであるものの、最高54Wに設定可能となっているため、どのような設定で4000越えのスコアが達成されたのかは気になるところだ。7月には搭載機種が発売される。IntelもAMDもAI性能の強化を打ち出しており、ゆくゆくはゲームの世界でもエッジ側(端末側)のAI性能が体験を左右することになる(NPCと自然な会話ができるようになるなど)だろうが、それにはあと2年程度かかるのではないか。


ここからは各製品を確認していく。

基本的に年次アップデート版(APUのみのバージョンアップ版についてはこの表には加えないこととしている。

メーカーONE-NETBOOKAYANEOMSIGame Pad DigitalONE-NETBOOKAYANEO Game Pad DigitalAYANEO
機種名OneXPlayer X1AYANEO FLIP Claw A1MGPD Win Mini2024OneXPlayer X1 miniAYANEO AIR 1S Ryzen 8840UGPD Pocket4AYANEO 3
CPUCore Ultra7 155H Core Ultra5 125H ※Ryzen版も予約受付中Ryzen7 7840u(?)Core Ultra 7 155H Core Ultra 7 125HRyzen7 8840u Ryzen7 8640uRyzen7 8840uRyzen7 8840uAMD Ryzen AI 9 HX370 /365 AMD Ryzen7 8840uAMD Ryzen AI 9 HX370 AMD Ryzen7 8840u
MemoryLPDDR5 7567Mhz 16GB-64GB??LPDDR5 6400Mhz 16GBLPDDR5-6400 16GB/32GBLPDDR5 7500Mhz 16GB-64GBLPDDR5x 16GB/32GBLPDDR5 7500Mhz 16GB-64GB?
記憶装置1TB-4TB??1TB512GB/2TB512GB-2TB512GB-2TB1TB-4TB?
画面サイズ10.95インチ(2560×1600)7インチ(1920×1080) 120hz7インチ(1920×1080) 120Hz7インチ(1920×1080) 120Hz8.8インチ(2560×1600) 144hz5.5インチ / AMOLED 1920×10808.8インチ(2560×1600) 144hz7インチ(LCD or OLED ) Hi Refresh rate
本体サイズ(mm)252×163×13??294 x 117 x 21.2167×109×26mm210.6×129.2×20224×89.5×21.6206.8×144.5×22.2?
本体重量789g??675g520g710g約450g770g?
デジタルペン×××
カメラ〇(Front)×××〇(Front)×〇(Front)×
バッテリー65W??53Wh44.24Wh65.2W38Wh44.8wh?
拡張ボートUSB C-4.0×2、USB A×1、Oculink、microSD??USB C4.0 ×1、microSD付け替え式グリップ(底面パーツ付け替え),ハードウェアキーボード,USB C-4.0×2、USB A×1、Oculink、microSDUSB C-4.0×2、microSDUSB4×1、USB-A、HDMI?
その他着脱式キーボード、着脱式コントローラー、着脱式スタンド、顔認証、指紋認証、Harmanスピーカーキーボードバージョンと2画面(3.5inch)バージョンあり。 マウスポインタゲームパッド、Androidエミュレータ、指紋認証、Claw専用ドック(別売)、2WスピーカーUSB4×1、USB3.2TypeC×1、USB-A×1、microSD、タッチパッド、ゲームパッド着脱式キーボード、着脱式コントローラー、着脱式スタンド、顔認証、指紋認証、Harmanスピーカーゲームパッド、指紋認証、カラーバリエーション、2in1、選択モジュール構造ゲームパッド
登場予定販売中予約受付中販売中販売中販売中8/31発売予定12月ごろ2025/02/01
参照URLメーカーページメーカーページメーカーサイトメーカーページメーカーページメーカーサイト海外販売サイトメーカーサイト

AYANEO

2024年の最初の製品の一つとして、IndieGOGOでクラウドファンディングが告知されているAYANEO FLIPが挙げられる。この製品はメイン液晶が7インチで、キーボード付きとサブディスプレイ付きの2種類のモデルが存在するユニークな構成だ。採用されるAPUはRyzen 7 7840Uと記載があるが、IndieGOGOのページのURLは8840uとなっているので、こちらが搭載されるのかもしれない → 両バージョンが存在する。AYANEOは本当にバリエーションが多い。メーカー側でも管理が大変そうである。ゲームパッドの配置はゲーム機に近く、キーボード付きのモデルはGPD WinMINIと同様のボタン式の物理キーボードを搭載しているが、キー自体はGPD WinMINIより小さい可能性がある。また、サブディスプレイ搭載バージョンは、このサブディスプレイでフリック入力などが可能かどうかが気になるポイントだ。

また、廉価なAYANEO Next Liteが発表されている。機能・性能的にみるべきところは見当たらない(Ryzen7 4800uはTimeSpyで1300程度)が、実績のあるAYANEOが作る手軽に買えるゲーミングUMPCとしてニーズはありそうだ。

8月31日にAYANEO AIR 1S Ryzen 8840Uの発売が予定されている。最大の特徴は450gという他を圧倒する軽さだ。また、軽量化と放熱器は相反する要素だが、TDPも電源駆動時には25wまで上げられるということで抜かりはない。画面のサイズはGPDWin3を持っている自分からするとちょっと小さいが、高精細なAMOLEDであればカバーされるかもしれない。

AYANEO3が発表された。スレート型の筐体はすでに珍しいものではないが、最新のAPUやOLEDディスプレイが選択できるところが特徴である。自分が気になるのはかなり気合が入っているらしいスピーカーだ。サイトには ” deep collaboration with sound specialists ” と記載があって、どれほどのものなのか聞いてみたくなる。

MSI

同時期に登場しそうなのは、前述のCore Ultraプロセッサーを搭載したMSI製のClaw A1Mである。前述のように性能を最大限に引き出せば非常に高いパフォーマンスが期待できる。ただ、それを支える強力な排熱機構と53Whの大容量バッテリーの反動か、7インチの画面サイズに対して675gはやや重い印象がある。

ONE-NETBOOK

早くも今年の決定版にさえなりそうな機体のクラウドファンディングが始まった。Core Ultra7 155H を搭載したOneXPlayer X1である。メモリも7567Mhzと高クロックで隙がない。紹介ページによれば、TDPを35Wに設定したときのTimeSpyのスコアは4000を超えるようだ。グラフィックスコアも3700を超えるようで、NVIDIA GeForce GTX 1650を上回る性能といってよさそうである。それ以外の仕様も昨今のOne-Netbookらしく着脱式のコントローラーとキーボードという構成で、ノートPCライクにもゲームに特化しても使えるようになっている。また、Oculinkのポートも用意されており、One-Netbookが提供するGPUボックスのONEXGPUを接続することもできる。さらにデジタルペンにも対応している。
ただ、これまで標準的だった28WのTDPを超えるため、重量は増える傾向が見える。
個人的にはHarmanのスピーカーと、認証指紋とフロントカメラによる顔認証ができる点のポイントが高い。

この発熱と性能のバランスがあまりよくないのか、Core Ultra7 155H に変えてRyzen7 8840u搭載機も発表された。

また、X1から一回り小さいX1miniが発表された。基本的な性能はX1と同じでディスプレイを10.95インチ → 8.8インチとし、重量も789g→710gと軽量化されている。一つ注意した方が良いのは、HPのスペックシート上、デジタルペンのサポートがなくなっている点だ。

GPD

GPD のGPD WIN Mini2024のIndieGOGOでのクラウドファンディングが始まっている。既存のRyzen 7840uから8840uへの変更以外にいくつかの変更箇所がある。アピールされているのはディスプレイの変更で、120hz駆動の可変フレームレート対応ランドスケープ液晶の搭載である。より滑らかで快適なゲーム画像が期待でき、昔のゲームで画面が縦になってしまうという問題点が解消されるということで、これなら買い! という人もいるだろう。 だが、GPD WIN Mini(2023)の液晶に一切不満がない自分は乗れないので残念である。
また、Oculinkが廃止されてUSB-Aポートに置き換えられ、ランドスケープへの変換チップが不要となったことで消費電力の低減(=バッテリー持続時間向上、発熱低下)、8840uになることで基本性能も10%程度上がるようだ。Xによると基盤は新設計でGPD WIN Mini(2023)との互換性はないとのこと。

GPD Pocket4が発表された。スペック表はメーカーの海外ECサイトからとっているが、8/16時点では重さが1.8kgだったり、厚さが5cmとなっているなどまだ未完成の様子。Pocketは一般的なノートPCに近いキーボードを備えたラインで、Pocket4はほぼPocket3を踏襲した筐体のようである。Ryzen AI 9 HX 370を積んでいるのが最大の特徴で、TDP:25Wでどこまで性能が出せるだろうか。Pocket3ではデジタイザやカメラを備えていたが、その辺りはまだわからない。

デザインはGPD Pocket3を踏襲しているが一回り大きくなった画面に合わせて筐体も大きくなっている。これに伴ってGPD Pocket3に比べてTDPも上がっており、Ryzen AI9 HX370の性能を引き出すこともできるだろう。自分としては8型を堅持してほしかったので大型化は残念だが、コンパクトなPCで性能も妥協したくない、という向きにはかなり魅力的なマシンといえる。Pocket3にはあったデジタイザ(デジタルペン)は残念ながら省かれている。

また、APU更新版のGPD Winmax2(2025)GPD Win4(2025)も発表されている。

GPD Winmax2は自分も6800u版を使っているが相変わらず快適である。特にホームPCとしてみたときに邪魔にならず、それでいて単体でも十分使用できるサイズが良い。また、小ささにもかかわらずコネクタ類が一通りそろっているので「ちょっと印刷したい」といった「PCが使いたいとき」に即応できる。GPD Winmax2(2025)を見ると、Ryzen AI9 HX370のGPUは6800uに比べて4割アップ程度であり、ローカルでAIを動かすには時期尚早という感覚なので自分は見送りだが、このブログで紹介した中でもメインPCとしてお勧めできる機種である。拙記事にも使いこなしについて記載しているものがあるのでご確認いただければと思う。(1kgを超える筐体はモバイル機種としてはお勧めできない)