2020年2月発売予定だった本品だが、コロナの影響か延期され、約半年後の8月にようやく発売となった。
発表があったのは2019年の12月でQualcomの新型チップQCC5124を搭載したアクティブノイズキャンセリングイヤホンとして非常に期待していたこともあり、製品の発売日の決定と同時に予約を入れ、この度手元に届いたのでレビューする。
そそっかしい自分のイヤホン選び
今回レビューするヤマハのEP-E50はイヤホンについたマイクから外部の音を取り込み、その逆位相の音を出力することで外音を低減させるアクティブノイズキャンセリング(ANC)が特徴だ。特に地下鉄で通勤をしていると密閉式のカナル型イヤホンでも音量を上げないと音楽やネットラジオを聴きとれないので、この機能は重宝する。
ANCイヤホンの日本における2台巨頭はソニーとAppleだろう。ただ、この2社の製品は価格がそれなりに高いことと、主力は左右独立型ということで自分は手が出せなかった。家にある片手ずつになった手袋たちを見れば自分が左右独立タイプを使うべき人間ではないことが分かる。それに、駅の構内でも「イヤホンを線路に落とすと簡単には見つかりませんよ」というアナウンスが流れている。自分が使った場合、駅員さんに迷惑をかけるか、泣く泣くあきらめることになる可能性が高い。また、満員電車で装着しようとして耳から落とし、謝りながら周りの人をかき分け、拾っていた人を見ても「このタイプはそそっかしい自分には無理」と思っていた。要するに1~2万円ぐらいのネックバンド式ANCイヤホンが出てこないかな、と思っていたのである。
ANCイヤホンはこれまで外出用に5000円前後のN20NC(AKG)、ANC GO(dyplay)を使ってきた。N20は初めてのANCイヤホンだったのでノイズキャンセリング機能に感動した。ただ、音作りがドンシャリ気味で好みに合わないのと有線式でコントローラーが大きかったので取り回しが悪く、あまり使わなくなっていた。ANC GOはANC機能はN20NCに劣るものの、無線で取り回しが良かったのと音質はN20より好みだった。EP-E50AはYAMAHAが作るということもあって音質はさらに良いだろうし、価格は1万円台半ば、Qualcomm社の最新オーディオチップ「QCC5124」を使用するということで発売前から期待していた。ただ、当初の発売予定だった2月から新型コロナの影響なのか半年ほどずれ、8月に発売となった。
EP-E50A
- 装着感
イヤーチップは最初からついているMサイズでぴったりだった。装着がしやすく、しばらくつけていても疲れてこない。良好な装着感だと思う。
iPhone、Envy X360 とのペアリングも特に問題なく完了した。
ただ、 Envy X360 とペアリングした際はロジクールの無線マウスを動かすとノイズが入る現象が起きた。これはいったん接続を削除して再接続したところ解消できた。
- 音質
以前も記載の通り、糞耳なのであまり音質の評価はできないが、ANC GOやそれ以前に使っていた1万円台のカナル型イヤホンより「広い空間で音が鳴っている」ように感じる。特にパーカッション系の音が斜め後ろから鳴っているような立体感を感じることができる。音質も自分が苦手なサ行で耳に刺さるような感じは全くないし、低音も十分出ていると思う。全域において自然な音というのはこういうことではないだろうか。ひょっとして今まで使ってきたイヤホンの中で一番好きな音かも? と、思ったら、リスニングケア機能が効いているようだ。
音量に応じて音のバランスを最適化して、耳への負担も抑えるヤマハの独自技術「リスニングケア」
https://jp.yamaha.com/products/audio_visual/headphones/ep-e50a/index.html
ヤマハ独自の「リスニングケア」機能を全モデルに搭載しました。人間の耳は音量によって聴こえ方が異なり、特に小さなボリュームの時ほど低域と高域が聴きづらくなります。また、様々な環境音によってもコンテンツの音が聴き取りにくくなるため、ついつい音量を上げ、知らず知らずのうちに周囲に音が漏れるほどの大音量になっていることも珍しくありません。「リスニングケア」は、そういった音の聴こえ方の違いに着目し、音量毎に最適なバランスになるように補正することで、音量アップによる耳への負担を抑え、自然で聴きやすい音を再現します。
自分はあまり音量を上げないで聞くほうなので、特にこの機能が良く機能して「曲のイメージは壊さないまま小さな音量で聞く」ということが可能になっているらしい。人工的に強調された違和感も自分は感じることがなく、これはちょっとほかのイヤホンには戻れなさそうな印象を受ける。
リスニングケア機能はアプリからオン/オフを制御でき、オフにするとそこまでの感動はなくなるものの、素性の良さは変わらない。
- ANC
音質には満足したので、肝心のANC機能を試してみた。
とても残念だがこれには正直、がっかりというほかない。感覚では、ANC機能の効きはN20NCの7割程度のANC GO(dyplay)のさらに半分程度しか感じられない。ANC GOでは部屋のクーラーの音が消えたのに対してEP-E50Aでは聞こえ続けているし、このテストのために地下鉄に乗ってみたがANCはほぼ無意味であると感じた。
また、N20NCやANC GOはANC機能が独立のスイッチになっていて、「デジタル耳栓」として使えた。EP-E50AもANCボタンは独立しているが、まず電源を入れる必要がある。電車で本を読んでいるときなど、音楽は流さず、ANC機能のみを使いたいと思っても、電源をオンにするとペアリングが行われ、電力の消費が無駄に行われてしまうのでいただけない。もっともEP-E50AのANC機能ではデジタル耳栓のような使い方は難しいと思うが…。
また、ANC GOもEP-E50Aも電源ONやモードの切り替え時の音声がびっくりするような大きな声である。これらの機種に限らずAmazonのレビューでは様々なBluetoothイヤホンのインフォメーションの音量に不満が上がっている。メーカーにはいい加減対応していただきたい。せっかくアプリがあるのだからそれで制御できないものだろうか。
- 結論
音質の素直なBluetoothネック式イヤホンであり、特に小さめの音量で聞く人にはリスニングケアの機能を試してみてほしいと思う。
ANCがほとんど効かない点は、コロナによる影響でチューニングをすることもままならなかったのかな、とも思うがアプリを見るとファーム更新もできるようなので今後の更新による改善に期待したい。
ANC Goは後継機種になっている模様