テストは改造の後で? 【GPD Win Mini 2025実機レビュー】冷却対策・改造記録GPD Winmini2025(AMD HX370)

GPD Win Mini 2025(AMD HX370 Indiegogo版)で一通りベンチマークテストを実施したが、どうにも挙動が不安定だった。熱の問題や電圧の不安定さが見られたため、分解して内部を確認し、冷却性能の改善に取り組んだ。その作業記録とベンチマーク結果をまとめておく。

この記事は改造を推奨するものではありません。
※改造をするとメーカーの保証を受けられなくなる可能性があります。20万円を超える保証もついている機械を分解してわざわざ保証対象外にするのは得策とは言えません。
※この記事のGPD Winmini2025 はIndiegogoのクラウドファンディング版なので製品版とは異なる可能性があります。

ファームウェア適用で記録が消失

ベンチマークの記録を一通り取り終えた後、2025年3月18日に公開された新ファームウェアをうっかり適用したところ、保存していたデータがすべて消失してしまった。

初期ベンチマークと問題点:排熱と電圧の不安定さ

初期設定後、モンスターハンターワイルズなどを用いてベンチマークテストを実施したが、TDP25Wを超えると明らかに熱ダレ(サーマルスロットリング)が発生した。また、CPUへの電圧供給も不安定に見える。

Indiegogo版ゆえの初期不具合かもしれないが、GPDに送って修理を依頼するのは時間も手間もかかる。そこで、自分でなんとかしてみることにした。

なお、記憶の範囲ではモンスターハンターワイルズで以下のようなベンチマーク結果だった。

TDP設定解像度・設定スコア
25W1080p・最低約12,000
35W1080p・最低約9,000

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一方、PC Watchの以下の記事では、公式には1080p・最低・TDP35Wで14,000超えのスコアを記録している。

モンハンワイルズも動く「GPD WIN Mini 2025」はTDP/冷却性能が向上。720pなら中設定も現実的

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1664999.html

熱対策:冷却不良の原因を調査

冷却不足の原因として、以下の点を順に検証した。確認の難易度もこの順で高くなる。

  1. CPUグリスの不備
  2. ヒートパイプとCPU・放熱器の接触不良
  3. ファンの回転不足
  4. ヒートパイプ自体の不良

分解の結果、①と②は問題なし。③の確認は困難で、④は構造的に確認が不可能であったため、物理的に放熱経路を追加する方向で対策を行った。以前GPD Winmax2に行ったのと同様の対策にした。蓋の裏に放熱シートを貼り、筐体からも熱を逃がすのである。

購入したものは以下の通り。

・アイネックス(AINEX) ナノダイヤモンドグリス JP-DX2
・ワイドワーク T-Global製グラフェン銅箔熱伝導シート
・13 W/m.Kシリコンパッド熱伝導マット

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一度開けたのでCPUグリスも塗りなおす。ここは奮発して高性能品を購入した。

蓋を開けたところ。購入して3週間ほどだが既にホコリがファンブレードについている。部屋が埃っぽいのだろうか…。ファンの右側にAPU(AMD Ryzen AI 9 HX 370)がある。この上のパイプはただの棒ではなく、ヒートパイプと呼ばれるれっきとした工業製品である。この中は中空になっており、内部は梨地状の表面と純水が入っている。これが熱されると内部で水が気化熱を奪って気化し、放熱器のところで冷やされ、水となって熱いところに戻る…というサイクルが繰り返される。熱を移す能力は単純な銅管の数倍だという。考えた人はマジで天才だと思う。

CPUクーラーを取り外したところ。CPUはすでに吹いた後だが、周りに飛び散っていたグリスは最初はもっとひどかった。ひょっとしてこれが性能不足の原因…だったらこれで解決だからうれしいのだが…。


できるだけ周りのグリスはふき取った。アイネックス(AINEX) ナノダイヤモンドグリス JP-DX2を盛る。これはちょっとつけすぎ。写真の後で少し削り取った。グリスとクーラーは2度付け禁止ということなので、CPUクーラーの脚にねじをセットした状態にして上から押さえつけ、一度締めた後にCPUからクーラーが剥がれないように注意しながら行った。

底板部分にワイドワーク T-Global製グラフェン銅箔熱伝導シートを貼る。フィッティングを考えて型紙を作った。放熱ファンのところを少し折り返して風の流れでこのシート自体を冷却できるようにする。

シートとCPUを密着させるため、CPUと当たるところに熱伝導マットを張り付けた。これを貼らずに蓋に直接シートを貼ったほうが放熱性は高くなるはずだが、時間がたつにつれCPUと熱伝導シートとの圧着が弱くなるのを防ぐのが目的である。

蓋側

CPUクーラーの圧着が弱く感じられたので、2mmの熱伝導マットをファンとCPUクーラーの間に入れた。ファンはねじ止めなのでがっちり止めることができる。その土台となっている熱伝導マットとヒートパイプを合わせて約1.5cm角の熱伝導マットを互い違いになるように重ねた。互い違いにしているのは放熱フィンのように機能することを期待したためだ。これが底板を占めたときに適度な圧着度合いでくっつくところまで重ねている。また、CPUクーラーとヒートパイプの接続不足がないとも限らないので、熱伝導シートをヒートパイプにかかるようにCPUクーラーに貼っている。シリコン製の熱伝導マットは絶縁性だが、このシートは回路に触れるとショートする可能性もあるので、注意が必要である。

型紙をとったりしたので2時間ほどかかって作業は終了した。

効果検証:TDP28Wまではつかえるように

作業後、無事起動したので一安心。起動時のファンの回転速度が抑えられたようで、明らかに静かになった。実際にモンスターハンターワイルズのベンチマークを再度実行したところ、結果的に35Wではやはり熱ダレが発生してしまうようだ。ちなみに意味がないのでやらないが、ベンチスコアだけを狙うのであればキンキンに冷やしてスタートさせたら高得点は狙えそうではあった。一方、発熱とスコアが安定したのは28Wで、以下のような結果が得られた。

720p×最低でスコア:16550となり、公式のスコアもちょこっとではあるが更新している。公式のTDP35Wのスコアを28Wで超えているのだからまあまあだろう。この状態で他のテストも含めて性能を確認していこうと思う。

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※改造はメーカー保証を無効にするリスクがあるため、実施は完全に自己責任となります。本記事の内容はあくまでご参考までにお願いします。