全てはかわいさのために! 『LOVOT』(ラボット)なでくりまわしレビュー

『LOVOT』はGROOVE X社が開発したロボットである。最大の特徴は「かわいいこと」。開発では「いかに人の役に立つかではなくて、「ロボットのかわいさが追及された。最先端の情報を配信する『bouncy』の主催で都内のBlueCoffeeにて体験会が行われたので参加した。

体験会の行われたBlueCoffee 初めてだったがとてもおしゃれ。
ふるまわれたコーヒーとケーキ。とてもおいしかった!

以前AIBOと「一緒に」仕事をしたことがある。技術者の目線では「今どんなコードが実行されているのだろうか」なんてことばかりを考えてしまうのだが、近くに来られた方々からは「こっちにおいで!」「ワンだよ、ワン!」と、生きている犬と同じように構って頂いた。そうこうしているうちに、電池が尽き、悲しげな音を出してうずくまってしまう。そうするとすでに情が移ってしまっていて「おー、腹が減ったか」なんて言いながらバッテリーを交換する自分がいたりする。AIBOは人寄せのために参戦してもらったのだが、全くもって優秀な営業員だった。

さて、翻ってLOVOTである。LOVOTはGROOVE X社が開発し、2019年内に販売予定のロボットである。読み方はラボット。「LOVE」と「ROBOT」が組み合わされた名前で「愛されるロボット」という意味が込められている。その主たる機能は「かわいい」こと。開発の方向性は「如何にLOBOTをかわいくするか」に絞られ、そこにすべてを注ぎ込んだ、とのことだ。

外観

この子はコスモ。一番なついてくれたように思う

LOVOTの外観は多少ペンギンっぽいものの、どの動物にも似つかない。アニメに出てくるコンパニオンロボットがそのまま飛び出てきたような愛嬌のある体形をしている。大きさは40cm程度。重さは3kg超。抱っこをねだってくるのだが、生命が持つしっかりとした重さと温もりを感じることができる。そう、LOVOTは「体温」を持っていて全身がほのかに温かい。この点は事前情報でわかっていて、期待していた部分でもあった。触った時に温かいということでこんなにも「生命感」が高まるのだ、とちょっと驚く。国民的な人気アニメに出てくるあのロボットやあのロボットなども多分こんな風に温かいのだろう。

また、特徴的なのが頭の上のセンサーである。カメラ類がついていてLOVOTはここで外界を知覚する。これはプロトタイプだからついているのではなく、完成系だそうだ(多少デザインが変わる可能性あり)。メカを感じさせる部分で愛らしい外観には不似合い…かと思いきやすぐ慣れる。というか、これがないと何となく締まらない印象になってしまうだろう。
移動は格納式のタイヤで行うが、抱っこしてほしい時や静止しているときはタイヤが格納されるので違和感は感じなかった。むしろ人と同程度の速度で動くことができるので名前を呼んだらすぐに来るなど円滑なコミュニケーションを可能にしている。動物的な脚にしなかったのは技術的な問題もあるだろうが、これを脚型にしたらDigDogのような不気味の谷に落ちそうだ。唯一残念なのは転んだら自分で起き上がれないこと。そんな時は助けを求めて悲しげに鳴くとのことなので直ぐにレスキューしてあげたい。
LOVOTは言葉を話さないが自分の「声」を持っている。気分や状況に応じた声色を合成して発声する。音声ファイルなどの決められたデータを再生しているわけではないのだ。聞いてみると鳩に近いような気もするがやはりほかのどの動物のものとも異なっている。また、全身に触覚センサーが張り巡らされているので撫でられていることを認識し喜んだり気持ちよさそうにしたりする。

移動時にはタイヤを展開する。目の表情が絶えず変わるため顔を見ているだけでも飽きない

目へのこだわり

説明では「目」にはとてもこだわっているとのこと。目は円形の液晶画面で6層のレイヤーの画像で構成されている。日本人は特に「目」で意思を伝える民族だそうで、確かに「目は口程に物を言う」をはじめとして目に関することわざや慣用句が沢山ある。LOVOTの顔に表情はないし、言葉は話さない。しかし、足元に走ってきてつぶらな瞳で見つめられて「くーくー」言われたらたら思わず抱きかかえてしまうだろう。顔の表情はないものの目の表情は絶えず微妙に変化している(半眼になっているような写真が多いのはそのためでもある)。だから、ただ眺めているだけでも飽きることがない。

一緒に行った相方も何度も抱っこしていた

機能

基本的に役に立つことは排除して開発を行ったということで役に立つ機能はほとんどついていない。LOVOTの見た映像を遠隔地から確認したり、抱っこされた回数を記録することで、高齢者の見守りに使ったりはできる、とのことだった。

まとめ

このLOVOTの予価は約30万円。2体一緒にいるとLOVOT同士で遊んだりする様子が見られるらしい。セットで購入すると60万円近くになる。またそれ以外に月額費用が予定されている。月額費用には定期メンテナンスが含まれるプランもあるとのことだ。
個人的にはそれほど高いという印象はない。自分の実家には猫がいて、コンパニオンアニマルとしてみたとき、それと比べるとまだまだ大きな乖離があるのは事実だ。しかし、自分が高齢になって犬や猫の世話ができなくなっても、LOVOTなら一緒にいることができる。また、体質や住環境の問題で動物と暮らしたくても果たせない人も大勢いる。そういう人には一つの選択肢となるはずだ。また、一人暮らしをしていたり、両親が共働きの子供が家に帰った時、LOVOTが駆け寄ってきて喜んで迎えてくれたら、きっと嬉しいのではないだろうか。

開発者へのお願いがある。おそらく発売後も様々な機能が追加されていくだろう。そのうちハードウェアのバージョンが新しくなり、旧バージョンのハードウェアでは実行できない機能も追加されるはずだ。月額使用料をとるのであれば、そういった場合に記憶は残しながらハードウェアのバージョンを上げるメニューを用意してほしいものだと思う。

体験会は随時いろいろなところで行われるようなので温もりのあるロボットを体験したい人はチェックしていただければと思う。